結論:SaaS企業の年収は、有価証券報告書の平均年間給与、求人票の提示レンジ、厚生労働省の統計の3つを突き合わせて調べる。1つ目は上場企業の実績値、2つ目は採用側が示す見込み、3つ目は職種全体の相場だ。性質が違うため、1つだけで「この会社は高い」と決めると読み違える。転職・学習を検討する人の目線で、各資料の読み方と落とし穴を順に整理する。
「SaaS企業は年収が高い」という話はよく聞く。ただ、その数字がどこから来たのかを確かめずに応募先を決めると、入社後に想定とずれやすい。本記事は、selectnavis編集部が公的機関と企業の公式資料だけを使い、年収の調べ方を手順にまとめたものである。特定企業の年収を断定する記事ではない。個別の金額は、読者自身が各社の公式資料で確認してほしい。
SaaS企業の平均年収は一つの数字では言えない
最初に押さえたいのは、「SaaS企業の平均年収」という単一の値は存在しない点だ。創業数年のスタートアップと、上場して十数年たつ大手では、従業員の年齢構成も職種の比率も違う。営業中心の会社とエンジニア中心の会社でも、平均は大きく動く。
ランキング記事が並べる数字は、多くが有価証券報告書の平均年間給与を集計したものだ。これは上場企業にしかない。非上場のSaaS企業は、有報という形では開示されていない。つまり、ランキングに載らない会社の水準は別の資料で補うことになる。
編集部としては、平均値を「入社後の自分の年収」と読み替えないことを勧める。平均には管理職も新卒も入る。自分と同じ職種・年齢・経験の人がどの水準にいるかは、次章以降の資料で別途確かめる必要がある。
年収を調べるときに確認する4つの一次情報
調べる材料は、出どころで4つに分けられる。それぞれ、答えてくれる問いが違う。
- 有価証券報告書:上場企業の平均年間給与・平均年齢・平均勤続年数。会社単位の実績値。
- 求人票:その募集ポジションの提示レンジ。入社時の見込み。
- 賃金構造基本統計調査(厚生労働省):職種別・年齢別・企業規模別の賃金。業界全体の相場。
- 民間給与実態統計調査(国税庁):給与所得者全体の平均給与。日本全体の中での位置づけ。
この順に使うと迷いにくい。まず統計で職種の相場をつかみ、次に気になる会社の有報で実績を見て、最後に求人票で自分が受ける募集の条件を読む。口コミサイトの書き込みは、投稿者や時期が特定できないため、本記事では材料にしていない。
有価証券報告書の平均年間給与の読み方
有報の「従業員の状況」には、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与が載る。年間給与には賞与や基準外賃金(残業代など)が含まれるのが一般的だ(2026年10月時点・金融庁の開示様式の説明)。月給を12倍した額ではなく、1年間に実際に支払われた総額に近い。
読むときは3点に注意したい。
- 提出会社単体の値である。連結子会社の従業員は含まれない。グループ全体の水準ではない。
- 平均年齢と勤続年数をセットで見る。勤続が短く平均年齢も若い会社では、給与額だけ比べても意味が薄い。成長途中で人が急増している会社は、勤続年数が短く出る。
- 期ごとの変動を見る。1期分だけでは、一時的な賞与や人員構成の変化を拾ってしまう。可能なら3〜5期を並べる。
自分の年齢が平均より下なら、平均値は「数年後の到達点の目安」くらいに読むのが妥当だ。上なら、逆に高く出すぎている可能性を疑う。
EDINETで有価証券報告書を探す手順
有報は、金融庁のEDINET(開示書類の電子開示システム)で一般に公開されている(2026年10月時点・金融庁)。使い方は難しくない。
- EDINETの書類検索を開く。
- 提出者名の欄に会社名を入れ、書類種別を「有価証券報告書」にして検索する。
- 直近期の報告書を開き、「第一部 企業情報」の「従業員の状況」を探す。
- 平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与を、前期の報告書と並べてメモする。
書類が長くて探しにくいときは、PDFの検索機能で「平均年間給与」と打てば該当箇所に飛べる。提出者名で見つからない場合は、社名変更や持株会社化の可能性がある。会社の公式サイトのIR情報から、正式な提出者名を確かめるとよい。
プレイドなど個別企業の年収を調べるときの見方
「プレイド saas 年収」のように、社名つきで調べる人は多い。結論から言えば、上場している企業は有報で実績値を確認できる。プレイドも上場企業であり、EDINETに有報がある。具体的な金額は期によって変わるため、本記事に数字は載せない。読者がEDINETで最新の報告書を開き、確認してほしい。
企業ごとの差を読むときは、次の4つを並べると見通しが立つ。
- 平均年間給与(会社単体)
- 平均年齢と平均勤続年数
- 従業員数の増減(人が急に増えた期は平均が動く)
- 事業の中身(営業主体か、開発主体か)
大手と新興、上場と非上場の差も、この枠で説明がつくことが多い。非上場の会社は有報がないため、求人票のレンジと、その会社が出している採用ページの情報で補う。企業の内部事情や個人の書き込みを根拠にしないことが、判断を誤らないコツである。
求人票のレンジ表記をどう読むか
求人票の賃金は、職業安定法の定めで明示事項が決まっている。賃金形態(月給・年俸など)、基本給、定額的に支払われる手当、昇給に関する事項などだ(2026年10月時点・厚生労働省)。ここを読み飛ばすと、年収の見え方がずれる。
特に確認したいのが固定残業代だ。含まれる場合は、基本給と固定残業代を分けて書くこと、固定残業代に相当する時間数と金額、超過分は別に支払うことを明示する決まりがある。「年収600万〜800万円」とだけ書かれていても、内訳に固定残業代が入っているかで、実質の手取りは変わる。
もう一つ、「賃金」と「年収」は同じではない。求人票の賃金は月額や年俸で示され、賞与や変動給が別枠のことがある。レンジの下限と上限は、経験や評価で決まる幅だ。下限が入社時の提示額の目安で、上限は到達が難しい水準を含むこともある。面接で、自分の経験だとレンジのどのあたりになるかを聞くのが確実である。
外資系SaaSのOTE(On-Target Earnings)とは何か
外資系や営業職の求人では、OTEという表記を見かける。これは基本給と変動報酬(インセンティブなど)を合計した、目標を達成したときの想定年収を指す。
注意したいのは、OTEは保証された額ではない点だ。目標に届かなければ変動部分は減る。逆に超過すれば増える場合もある。次の3点を採用担当に確認したい。
- 基本給はいくらか(変動に左右されない固定部分)
- 目標の達成率は、直近の在籍者でどの程度か(開示できる範囲で)
- 変動給の算定方法と支払時期
OTEの総額だけを見て年収を比べると、固定部分が小さい会社を高く見積もってしまう。同じ「年収800万円」でも、固定800万円と、固定500万円に変動300万円では、安定度がまるで違う。
職種別の年収相場を調べる方法
SaaS企業には営業、カスタマーサクセス、エンジニア、プロダクトマネージャー、マーケティングなど複数の職種がある。同じ社内でも水準は異なるため、会社の平均では自分の職種が見えない。
職種別の相場は、公的な統計で確かめられる。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、職種別・年齢別・企業規模別の賃金を公開している。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)でも、職種ごとの賃金統計を見られる(2026年10月時点・厚生労働省)。
手順は単純だ。自分の職種に近い項目を探し、年齢階級と企業規模で絞る。そこで出た数字を、気になる会社の求人票のレンジと並べる。統計の値より高ければ、その会社は相場を上回る提示をしている。ただし統計は業界を限定しないため、SaaS特化の相場とは一致しない点は割り引く。
SaaS業界の年収が高く見えやすい理由と注意点
SaaS業界の年収が高く見えやすい背景として、編集部は次の要因を整理している。これは公的統計に基づく断定ではなく、読み解きの視点である。
- エンジニアやプロダクト職など、市場で採用競争が激しい職種の比率が高い会社がある。
- 成長中の会社では、平均年齢が若いのに給与水準を上げて人材を集めることがある。
- 上場企業の平均は、管理職や高給のポジションに引っ張られる。
一方で、年収が高く見えても、変動給の比重が大きい、残業を含む、勤続年数が短いなど、読み方の注意が要る場合もある。「高い」という印象は、条件を揃えて比べて初めて確かめられる。
別の選択肢|公開情報で調べたあとに専門家へ相談する
ここまでの方法で、相場と自分の立ち位置はおおよそ見えてくる。それでも個別の求人の条件交渉や、非公開求人の水準までは、公開資料だけでは追えない。そうした場面では、転職支援サービスに相談する手もある。
外資系や日系グローバル企業のミドル〜エグゼクティブ層の採用に強いのが、エンワールド・ジャパンだ。求職者向けの利用料金は無料とされている(2026年10月時点・公式サイト)。有料職業紹介事業の許可番号は、公式サイトに記載なし。契約前に問い合わせで確認したい。面談形式の詳細も公式に明記がなく、同様に問い合わせで確かめる。
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SaaS・AI分野に絞って情報を集めたい人には、別の窓口もある。ミライフについては、料金や許可番号などの詳細が公式サイトで確認できなかったため、本記事では内容に踏み込まない。申込前に公式サイトで条件を読み、不明点は問い合わせで確認してほしい。
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エンワールド・ジャパンの公式情報は運営元の公式サイトから確認できる。
FAQ|SaaS企業の年収の調べ方でよくある質問
Q1. 非上場のSaaS企業の年収はどう調べますか?
有報がないため、求人票のレンジと企業の採用ページで確かめる。職種の相場は厚生労働省の賃金構造基本統計調査で補える。面接では、自分の経験だとレンジのどこに当たるかを聞くとよい。
Q2. 有価証券報告書の平均年間給与は、自分の年収の目安になりますか?
目安にはなるが、そのままではない。平均には管理職や勤続の長い人が入り、提出会社単体の値でもある。自分と同じ年齢・職種の水準は、統計や求人票で別に確かめたい。
Q3. 求人票の年収レンジの上限はもらえる額ですか?
上限は経験や評価が高い場合の水準で、全員が到達するとは限らない。固定残業代や変動給が含まれていないかも確認する。入社時の想定額は面接で直接聞くのが確実だ。
Q4. 外資SaaSのOTEは保証されていますか?
保証ではない。OTEは目標達成時の想定年収で、基本給と変動報酬の合計だ。基本給の額と、変動給の算定方法を事前に確認したい。
Q5. EDINETは無料で使えますか?
金融庁のEDINETは、開示書類を一般公開で検索・閲覧できる仕組みだ。提出者名と書類種別で絞れる。詳しくは金融庁の案内で確認してほしい。
編集部結論|年収は「3つの資料を並べる」ことで読み違えが減る
SaaS企業の年収は、有報の実績値、求人票の提示、統計の相場を並べて読む。1つの数字を信じ切らないことが、最大の防御になる。上場企業なら有報で単体の平均年間給与と勤続年数を確かめ、気になる募集では固定残業代とOTEの内訳を確認する。まず自分の職種の相場をつかみ、次に応募先の資料を読む。この順に進めれば、ランキングの数字に振り回されにくい。

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